あんたのその姿見てると、勝者って感じじゃないのよね。



 対撃でボロボロになったオレを見たアキに、溜息混じりにそう云われて、オレは首を傾げた。

 

 


 


 

 きっとそれでよかった

 

 

 

 「ちょっと攻撃受けすぎなんじゃないの?そんな風になる前に決着つけなさいよ!
  相変わらず力押しばっかな戦い方してるんでしょ!!」

 アキはオレの顔を見るなり、凄い勢いで捲し立てた。
 久々に会った途端にこれかよ、まぁアキらしいけど。

 確かにさっきまで戦ってた相手に梃子摺って、オレの格好はお世辞にも綺麗とは云い難いんだけどさ。
 そんなオレを見たアキは最初、オレが負けて戻されてきたと思ったみたいだった。

 「普通、そんなにボロボロにならない程度に、個魔が防御してくれるでしょ?
  あんたくらいよ、毎回そんな情けない姿になってるぷれい屋は!」

 別にオレだって、そんなに毎回ボロボロになってる訳じゃねーぞ。
 たまたまボロボロになった時に、アキに会いやすい、とかそんな感じだろ。

 そう云ったオレの言葉を聞いてるのか聞いてないのか。
 アキは誰もいない場所に向かって、なにか喋っていた。
 多分、個魔と話してるんだろう。ハル、とかいったっけ。

 会話に一区切りついたらしいアキが、オレの方を振り返る。
 呆れたように溜息をついて、オレ…というより、オレの後ろの空間を見た。

 「面倒臭がり、ねぇ…三志郎、あんたも変わってるけど、ついてる個魔も変わってるのね。」

 失礼な奴だな。オレは別に変わってないぞ。
 他の個魔は見えないから、フエが変わってるかどうかは知らないけど。

 

 


 面倒臭がり、ってのはきっと、フエの事を云ったんだよな。
 よく考えてみれば、ワリと会った時から色々と…例えばげぇむに関する説明とか省かれてたし。
 対撃の時も、盾になってくれた事はあまりなかった…ような?
 そもそも盾になってくれる事さえ、最初は教えてくれなかった気がする。かも。

 「…さっきのお嬢ちゃんの云った事、気にしてんのかい、ニィちゃん?」

 ぶつぶつと呟きながら歩いていたオレの背後の影から、音もなく姿を現したフエが訊ねてきた。

 いや、別に気にしてるワケじゃないんだけど。云われてみればそうかも、って思っただけだ。
 そう云いながら後ろにいるフエを振り返ると、思っていたよりもオレの近くにフエがいて、少しだけ
 ビックリした。足元だけは影に沈んだままで、口の端っこを笑う形に歪ませたフエが、オレの事を
 見下ろしている。

 「まぁ、確かに…俺は他の個魔に比べたら、ニィちゃんの盾になってやる事は少ないかもしれないな。」

 フエ自身にそういう自覚があるのなら、実際にオレは他のぷれい屋に比べて、盾になってもらえる
 確率が低いんだな。けどまぁ、オレ自身も、時々無茶をやってしなくていい怪我したりしてるし。
 その辺までは、フエも面倒見切れない、って事だろう。

 「ニィちゃんは、」

 考え事をしてたせいで少し俯いていた顔を上げると、さっきとはなんだか違う種類の笑いを貼り付けた
 フエがオレを見下ろしていた。

 「ニィちゃんは…どう思う」

 どう思うって、なにが。
 首を傾げて訊ねるオレに、フエはその笑みを口元から消して、つい、と横を向いた。

 「自分についてる個魔が。…俺みたいな奴じゃぁなくて…もっと、面倒見のいい、しっかりニィちゃんの事を
  守ってくれる奴の方が良かったって思ったりはしねぇのかい?」

 フエはそれだけ云うと、少しの間を置いてから俺の方を見て、そんな顔するんじゃねぇよニィちゃん、と云った。
 …そんな顔、って、オレどんな顔してたんだ?
 眉と眉の間に、ぐ、って力が入る。他の個魔の方がいいかって、聞いてるのか、フエは?

 そりゃぁさ、フエってオレがやる事にはいちいち文句つけるし、手伝えって云ってもすぐ影に潜っちゃって
 出てこなかったりするし、防御しきれないから対撃降参しろとか云うけどさ。
 でも何だかんだ云いながら、ホントにヤバイ時とかは、ちゃんと守ってくれるじゃん、オレの事。
 呆れるだとかバカだとか、ひでーなって思う事云う時あるけど、ちゃんとオレについて来てくれるじゃん。
 
 フエはオレの答えを、じっと待ってるみたいだった。
 人のこと、云えないんじゃねーの。今のフエ、なんか変な顔してるぞ。
 いつもと様子の違うフエに、オレは少しだけ戸惑った。
 上手く云える自信はないけど、あんまりフエを待たせるのも悪いから、思ったままの事を口にする。
 

 オレは、フエがオレの個魔でよかったって思ってるよ。
 フエはどう思ってるか知らねーけど、オレはフエの事、信じてるし。


 そう云ったらフエの顔が、さっきとは違う風に、もっと変な顔になった。
 え、なにその顔。
 ひょっとしてオレ、バカにされてる?それとも呆れられてる?

 オレが抗議しようと口を開いた時、フエの口元がいつもみたいに歪んだ形に戻って、ク、って小さく笑った。

 「いやはや…敵わないねぇ、ニィちゃんには。」

 敵わないって、なにが。
 そう聞こうと思ったけど、なんだかフエが楽しそうに笑ってるから。
 まぁいいか、なんだって。って、聞かない事にして、さっさと次の目的地に向かって歩き出した。
 そんなオレの後ろからついて来るフエは、まだ楽しそうに笑ってて。
 なんだかオレも可笑しくなってきて、歩きながら大きな声で笑った。

 


 
 

 

 


これで三志郎に「フエじゃない個魔がいい」なんて云われたら、
きっと不壊は一生立ち直れないほどヘコむと思う。
(ヘタレにも程があります)
06/7/13