「大佐、いる?」

 云いながらノック無しで部屋へ入ってきた少年は、
 来客用のソファに座って書類と睨めっこをしている人物を見遣った。
 


 ◆ひとやすみ。◆

 

 「残念ながらご覧の通り、ここには俺しか居ないよ。」

 穴が開くのではないかというほど凝視していた書類から顔を上げ、
 ハボック少尉が応える。
 ふぅん、と些かおざなりな返事をして、エドワードはこの部屋の主の机に歩み寄った。
 脇に抱えていた数冊の本を、その机の上に載せて振り返る。

 「借りてた本、返しに来たんだけど。ここに置いておくから、云っておいてくれる?」

 「おー。」

 短く応えた少尉は、再び書類へと視線を落とした。
 彼の前のテーブルには、二山の書類が今にも崩れそうに積み重なっている。

 「…何でこんなとこで仕事してるんだよ?」

 「今 俺の机、他の書類が山積みなんだよ。」

 それでココを借りてるワケ。と、溜息交じりに少尉は応えた。
 げんなりとした表情の少尉と書類の山を交互に見比べて、エドワードは苦笑した。
 
 「忙しそうだなぁ。」

 「『そう』じゃなくて『忙しい』んだよ。まぁ、大佐に比べればまだ俺なんか良い方だろうけど。」

 尤も、あの人はサボりすぎて自業自得なトコもあるけどな。
 そう云って、ポケットから煙草を取り出して口に咥えた。

 「…ココ、禁煙だろ?」

 「火は点けないよ。咥えてないと落ち着かない。」

 「へぇ、そんなもん?」

 「そんなもん。まぁお子ちゃまには分からないだろうけどな。」

 「子供扱いすんナ――!!!!!」

 シャウトするエドワードを楽しそうに眺めていた少尉は、ふと何かを思いついたように書類を置いた。

 「大将、」

 云いながら、座っているソファの自分の隣を、ポンポンと叩いた。
 ここに座れ、という意を込めて。

 「・・・・・?」

 怪訝そうな表情をしつつも、エドワードは大人しく少尉の隣に腰を掛けた。

 「よしよし、そのまま。」

 「なに…って、えぇッ!?」

 少尉はゴロリとソファに横になった。
 エドワードの太腿の上に頭を乗せて。
 …所謂、『膝枕』と云う状態で。

 「〜〜…少尉ぃ?」

 いきなり何やってるんだよ?
 とでも云いたそうな、呆れたような表情で、エドワードが見下ろしてきた。

 「んん?休憩だよ。キューケイ。」

 丁度一息入れようと思ってたところだしな。
 笑いながら云う少尉に、エドワードは小さな溜息を零した。

 「だからって何で膝枕…?」

 「だってココ、クッションないし。…まぁ贅沢を云えば、もう少し柔らかい方が好みなんだけどなぁ。」

 「…そーゆーのは成長期の少年にする要求じゃねぇだろ…」

 無理云うな!と、軽く小突かれる。
 それでもそのままの体勢で居てくれる辺り、彼なりに労わってくれているのだろう。
 
 「後でジュースでも奢ってやるよ。」

 「…安いなぁ、オレの膝…。」



 


 …その後うっかり2人して転寝してしまい、書類を取りにきた中尉に
 こってり叱られたとか。(主に少尉が。)
 中尉と膝枕の現場を目撃した大佐は、密かに自分もしてもらいたいと
 思ったとか思わないとか。

 

 

 

 


ハボエドというかハボック&エド。
「近所のお兄ちゃん、近所のガキ」
みたいな距離が好みです。