「はははは!これで鋼のは私のものだ!!」 砂埃の向うでエドワードを横抱きにし、高らかに笑う大佐。 最早勝ち誇った表情で、少尉を見下ろしていた。 しかし勿論、ヴィジュアル的に大佐はボロボロのままなので、 あまり良い絵面とは云えない。 「では少尉、私と鋼のはこれで失礼するよ。」 「くっ…」 この状況で、エドワードを奪還するのは困難…いや、 限りなく不可能に近い。 しかしそれでも、何とか大佐を引き止めようと 少尉が口を開いた時。 ゆらり、と。 未だ収まらない砂埃の向こう側に、大佐とエドワードと、 …もう1人。彼らの背後に人影が現れた。 「…あ、」 驚きの表情を作った少尉を見て、大佐が訝しげに後ろを 振り返り。 次の瞬間に大佐が見たものは。 迫り来る、堅い軍用ブーツの裏側であった。 ゴキン、ズササァッッ!! 中尉の放った後ろ回し蹴りが綺麗に決まり、 大佐が派手に吹き飛んで、地面に沈んだ。 …当然、エドワードはしっかりと中尉に確保されている。 「…さっ…すが中尉、お見事。…何かエライ鈍い音とか してた気もしますが…」 おまけに倒れている大佐の首は、イイカンジにあらぬ方向を 向いていたりもするが。 「まぁ、鉛弾で体重を倍に増やされるよりはマシでしょう。」 恐ろしいセリフをさらりと吐いて、中尉は自分の腕の中にいる エドワードに視線を落とした。 「すっげぇ〜ちゅうい、カッコイイ〜!! オレにもいまの、おしえて!!」 無邪気にはしゃぐエドワードに、中尉は滅多に見せない 極上の笑みを向けていた。 「…あ〜もう…どこ行ったんでしょうね兄さん…」 溜息をつきながら。 未だ目覚めぬ曹長を担ぎなおして、アルフォンスが呟く。 途中、エドワードと逸れた准尉と合流し、行方知れずの 兄を探し続けていた。 「…ひょっとして、もうロイの野郎にいただかれちまったとか?」 『そーゆー事云わないで下さい、中佐!!』 アルフォンスと准尉の声が見事に重なる。 へいへい悪かったよ、と横を向いた中佐の目に、 数十分前に見かけた時よりも更にボロボロになった 大佐を背負い、よろよろと歩いてくる少尉の姿が映った。 「おい、あれ!」 「ハボック少尉!?それに、大佐も…!!?」 慌てて駆け寄る3人に、よぉ、と気の抜けた声で 片手を上げる少尉。 「うわ、た、大佐…無残な姿に…」 「何か顔に靴の跡ついてますけど」 「エドはどうした、エドは。」 口々に云う男たちに、深い深い溜息をついて少尉は云った。 「…大将は、その…。中尉が、お持ち帰り…。」 ・・・・・・・・し―――ん・・・・・・・。 長い長い沈黙が、辺りを包んだ。 「で、中尉から伝言。『後片付け、宜しく』…だとさ。」 「そ…そう…ですか…」 「中尉が…」 「ま、まぁ…それじゃぁ口も手も出せんわな…」 皆、絞り出すように言葉を綴り、再び辺りは沈黙に包まれた。 そのまま暫く黙ったままでお互いの顔を見つめていたが、 中佐が諦めたように首を振って、云った。 「じゃぁ…片付け、するか…。」 それに黙って頷くと、男たちはただ黙々と 当初の花見会場へと戻っていったのだった…。
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