エルリック兄弟が参戦を表明したところで、タイミング良くドアが開いた。
  
  「…只今、戻りました…」

  その声に振り返った兄弟は、思わず眉を顰めて。

  「…なに、その恰好…。」

  ドアの前に立っていたのは、ボロボロに汚れて顔中引っ掻き傷だらけの
  ブレダ少尉・ファルマン准尉・フュリー曹長だった。

  「…鋼のに、説明を?」

  げんなりと尋ねた准尉に、大佐が頷いた。
  …大佐の顔が引き攣っているのは、部下の不幸を気の毒に思ってか、
  …或いは笑いを堪えているのか。

  「また、随分と男前になったなぁ。」

  こちらは明らかに同僚を気の毒に思ったハボック少尉の言葉。

  「いいセンまで追い込んだと思ったんですけどね…」

  涙目で溜息をつく曹長に、やはり気の毒そうな表情(?)でアルフォンスが尋ねた。

  「それって、例の猫の…?」

  傷だらけの3人は、重々しく頷いた。

  「…こりゃあ、予想以上に厄介そうだなぁ…」

  エドワードが天井を仰ぎ見た、その時。

  廊下で、怒鳴り声が響いた。
  何やら部屋の外で、騒ぎが起こっているようだ。

  「停まらんか!!勝手に出歩くなと云っているだろう!!」

  部屋の前でそんな怒声が聞こえ、それが合図とでも云うように。
  執務室のドアが、勢い良く開かれた。

  
  
  
  「どうも皆さん、ご機嫌いかが?」

  異様に朗らかに。

  扉の前に立った男は、司令部の面々に挨拶をした。
  人を小ばかにしたように、一礼をしながら。
  …その男は両腕を手錠で拘束されていた。  
  慌てて駆け付けた憲兵達が、男を取り押さえる。

  「…一体何事かね。」

  不機嫌そうに男を睨んだまま、大佐が尋ねた。

  「は、取り調べ室に連行中だったのですが、その…」

  「いやぁ、皆さんに挨拶ついでに、現在の状況をお聞きしようと思いましてね。
  しかしそのご様子ですと、『彼女』はまだ捕まっていないのかな?」
  
  男は、応える憲兵の言葉を遮って勝手に喋り始めた。
  
  「…残念ながら、アンタの云う通りだよ」

  ハボック少尉が、『コイツ、殴り倒してぇ』といった表情で男に応える。
  エドワードは、隣に立つ中尉に小声で尋ねた。

  「なぁ中尉、コイツが…?」

  「ええ、例の『キャットウォーク』よ。」

  その小声の会話を耳聡く聞きつけた『キャットウォーク』は、初めてお目に掛かる
  傍目に見ると奇妙な鎧と少年の2人組に目を遣った。
  探るような視線でアルフォンスを眺めた後、驚いたようにエドワードを見つめて。

  「…おや?おやおやおや。」

  両脇から拘束されているのもお構いなしに、『キャットウォーク』は
  エドワードに向かって歩を進めた。
  たじろぐエドワードと周囲に構わず、嬉しそうにエドワードの顔を覗き込む。

  「…な、何だよッ?」

  「いやなに、キミは僕のハニーにとてもよく似ていると思ってね。」

  「は…はにぃ〜…???」

  言葉を掛けられたエドワードのみならず、そこに居た全ての人々が
  苦虫を噛み潰したような表情を作った。

  …一体何を云っているのか、この男は。

  誰もがそう思っている中、『キャットウォーク』は尚も言葉を続ける。

  「そうだよ。我侭だけど本当は寂しがり屋で、でも決して人に懐こうとはしない。
  吸い込まれそうな美しい金の瞳をしているんだ、僕のハニーは。」

  うっとりとした目で見つめられ、エドワードは思わずアルフォンスの後ろに隠れてしまった。

  「な、なにコイツ、何コイツ!!」

  『キャットウォーク』の視線から逃れようと、小さい身体を更に小さくしながらエドワードが叫ぶ。
  見かねた大佐が、後ろから男の襟首を引っつかみ、勢い良くエドワードから引き離した。

  「…まさかとは思うが、その『ハニー』とやらは…」

  ほんの少し、大佐が怒りの篭もった口調で話掛けると。
  『キャットウォーク』はまだエドワードを見つめたまま。

  「そう、そのまさか。アナタ達が必死で追いかけている、あの白猫の事ですよ。」

  実に楽しそうに、そう云った。  

  
  


  

 

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