「あれは流石に可哀相だと思うんだけど。」 「はぁ?何が?」 先程、大佐達『軍人チーム』と分かれて捜索を開始した兄弟は、幾重にも連なる 入り組んだ細い路地を走っていた。 ソレらしき猫は見つからぬまま、休憩とばかりに歩調を緩めた兄に向かって 弟が控えめに発言したのであるが、兄には一体何の事やら思いもよらず。 「…大佐にさ、ちょっと云い方がきつ過ぎるんじゃないの、兄さん。」 溜息混じりに言葉を綴れば、エドワードは、あぁ、と面白くなさそうに下唇を突き出した。 「んなコトねーよ!!…いや、あるけど!!」 「どっちなのさ」 「だってよ、アレは大佐が悪いぞ絶対!!オレの顔見るとすぐに揶揄うし、 子供扱いするし、何か色々触ってくるし!!」 「うーんまぁ最後のは良識ある(ハズの)大人としてどうかと思うけどね…。」 そーゆー微妙な男心に気付かないんだね兄さん…と、子供扱いされても仕方ないような 恋愛に関する機微に全く疎いエドワードに再び溜息をつきつつも、同時にそんな今時 小学生でもやらないような感情表現しかできない自分を呪って諦めてください大佐…と、 結構酷い事を考えている妙に達観したアルフォンス(14)であった。 「…、アル!」 突然の、兄の鋭い声に。 ハッと顔を上げれば、エドワードは視線だけを右後方へ動かした。 それに倣って、アルフォンスも視線だけを動かしてみると。 真っ白な猫が。 すらりと長く伸びた尻尾を軽く左右に振って、ゆっくりとこちらへ近寄ってくるではないか。 「…兄さん」 「あぁ…」 金色の瞳。赤い首輪。 ・・・・・・間違いない。 二人は特に行動を起こそうとはせず、不自然ではない程度にただその場でじっとしていた。 標的の白猫が、こちらの間合いに足を踏み入れるまで。 兄弟の間で素早くアイコンタクトがなされる。 白猫が、二人の間合いに入るまであと6歩ほど。 あと4歩。 あと1歩・・・・・ 『彼女』の足がその1歩を踏み出した瞬間。 兄弟は同時に素早く振り返り、その足が下りる地点に向かって腕を伸ばした。 実戦で鍛え上げた、並の反射神経では反応できないスピードで。 『彼女』が右に逃げても左に逃げても捕らえられるように、両脇もがっちりガードを忘れない。 「よし、獲った・・・・!」 絶妙なタイミングに、エドワードは思わず声を上げた。 …が、しかし。 『彼女』の足は地面に届いていなかった。 勿論、兄弟のどちらの手にも届いてはおらず。 「・・・・えっ、・・・・」 エドワードの腕も、アルフォンスの腕も。 ただ虚しく空を切った。 『彼女』は片足を上げたままの姿勢で止まっていた。 まるで二人の考えなどお見通しだとでも云うように、「足を踏み出すフリ」をしていたのだ。 「…ウソ…」 「こ…の、猫っ…!」 そんな稚拙な方法じゃ捕まらないわよ。 まるでそう云っているかのように。 にぃ、と。 『彼女』の口の端が上がった。 |
なんかどんどん短くなっていく気が…