「今日は奴さん、中々姿を見せませんね」

  「・・・・・・・・・・・・・・」

  「まいったなぁ、もう時間がないのに」

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ」

  「こりゃぁ、大将たちの方が当たりだったって事っすかね?」

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ〜」

  「いや溜息ばっかついてないで仕事してくださいよマジで。」

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鋼の〜・・・・・・」

  「そんな恨みがましい目で見られても俺のせいじゃないっすよ」

  自分の胸に手ぇ宛てて考えてみてくださいよ、と
  今度はハボック少尉が溜息をつく。
  今日も今日とて、マスタング大佐はエドワードに同行を断られ、
  今も隣で大量に二酸化炭素を吐き出している。

  ・・・・・ホントにどうにかしてくれよこの人・・・・・。

  鬱陶しい事この上ない。
  運悪く本日大佐のお守り役になってしまった少尉は、
  本当に胸に手を当てて考え込んでいる大佐を眺めながら
  ガックリと肩を落とした。




  ――――本日、タイムリミット。




  一方、エルリック兄弟+ホークアイ中尉チームは。
  今正に、目標に接触せんとしているところであった。

  「
のヤロー、見つけたぞ!!今日という今日は、必ず…ってコラァ!
  早速逃げるなぁ!!」

  「逃げるなって云っても無理でしょ、兄さん。ほら早く追う!!」

  律儀にツッコみを入れつつ走り出したアルフォンスに、中尉が続く。
  エドワードはブツブツと何か(恐らく猫に対する文句を)呟きながら
  2人の後を追って走り出した。

  逃げる白猫を追いかけて、入り組んだ路地を疾走する。
  白猫は、微妙な距離を保ちつつ、誘うように先を走っていた。

  「…このままではまた逃げられるわね。この先はとても細い路地に
  なっているはずだわ。私やアルフォンス君では通れない…。」

  「ほら、兄さん出番だよ!!」

  「ぬあ―――!!誰がミジンコどチビか――――!!!」

  「いや、云ってないし。」

  「エドワード君はこのまま『彼女』を追ってちょうだい。私とアルフォンス君は
  反対側に回り込むわ」

  「・・・・・了解っ!」

  エドワードの言葉を受け、中尉とアルフォンスが三叉路を右折した。
  そのまま白猫を追って直進し、エドワードは次第に細くなる路地を走り続ける。
  いよいよ細くなってきた道幅に、確かにアルや中尉じゃ通れないなぁと思いつつ、
  =「自分は小さい」という図式に辿り着いてしまい、自己嫌悪した。

  「・・・・・って、ヘコんでる場合じゃねーなっ…と!!」

  目前に迫ってきたゴミバケツを飛び越える。
  どうにも障害物競走じみてきた。
  ゴミバケツの次は、高々と聳えるフェンスだ。

  「ホンット、オレじゃなきゃ追跡不可能だな、こりゃあ…よっ!!」

  云いながら、走行速度を上げて一気にフェンスを駆け上る。
  エドワードがしっかり付いて来ているのを確認しながら先を行く『彼女』は、
  随分と機嫌が良さそうだった。

  「
にゃろぅ…余裕ぶっこいてられるのも今のうちだぜ!!」

  浴びせかける怒声もさらりと聞き流し、『彼女』は走る。
  目の前に現れた鬱蒼と生茂る垣根の下の、僅かな隙間に滑り込んだ。

  「クソ、逃がすかよ!」

  子供が漸く通り抜けられるようなその隙間に、エドワードも続いて滑り込む。

  「イテッ!いてて…ちっくしょー!」

  手入れのされていない木々の垣根を潜り、木の枝に皮膚を裂かれる。
  顔を顰めながらなんとかその障害物から脱出すると、そこには。


  「あれ、大将?」

  「なにッ!?は、鋼の!?」

  こちらに振り返る大佐と少尉、そして。

  ニィ、と口の端を吊り上げて笑う、塀の上に鎮座している『ハニー』の姿があった。



 

 

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