「俺、弟がいるんです。」 語りだした内容は実に唐突で。 しかし天戒は黙って耳を傾けた。 「俺が一番上なんですけど。下にざっと 10人ほど弟妹がいましてね。」 …それは…父君も頑張ったものだな…。 「一番下の子は今年で7つになります。 …この子が産まれて、直ぐに両親が他界したので、 この子は親の顔も知らないんです。」 親の顔を知らない。 それは天戒も同じだった。 父も母も、幼い頃に死別した。 今では朧げな記憶に残る父の顔しか 思い出せない。 「それで7年前から、俺が弟達の面倒を見てた訳です。 特にその子は…俺が親代わりだった。今の世じゃ 大して珍しい話じゃないけど…」 それより酷い話だってありますし、と。 伏せた瞼に、哀しく歪んだ瞳が隠れた。 「…凄く優しい子でね。一番小さいくせに、他の兄弟の 事まで気遣って。家族が多い所為で、俺の稼ぎだけじゃ 満足な生活もさせてやれなかったのに。文句のひとつも 云いやしませんでした。親に甘えたい時期にその親も いなくて、小さい体で必死に俺たちの手伝いとかして。 …ずっと、我儘や甘えたい気持ちを押さえ込んでた。」 ズキリ、と。 胸が痛んだ。 目の前のこの男は。間違いなく。 「俺」を、引きずり出そうとしている。 「瞳が、そっくりなんですよ。 御屋形様と、その子が。自分の気持ちを殺してしまった …とても悲しい瞳をしている。」 閉じていた目をゆっくり開いて。 龍斗は、天戒を仰ぎ見た。 「御屋形様は、ここの頭目として。…人に、弱い自分を 見せられないのはわかります。でも。…見てるこっちが、 辛いですよ…そういうの…」 言葉が終わるより先に。 天戒の腕が、龍斗の肩を掴んだ。 「…っ、御、屋形…様っ…?」 ギリリ、と。 肩を掴む腕に、力が篭もった。 |