頭の奥で。
   警鐘が鳴り響いていた。

   これ以上、云わせてはいけない。
 
   想いが。

   「寂しい」という想いが。

   溢れ出しそうに。

   もしも「鬼道衆の頭目」でなかったら。
   自分を自分として…「九角天戒」という1人の男として。
   特別な位置からではなく。
   もっと、皆が近い場所で。
   俺に接してくれるのではないか?

    ―それを望んでどうなる?

   上に立つ身の孤独さを。
   誰にも悟られぬようにと、今日までやってきた。
   しかし、この男は。
   …一見して、その辺にいる普通の青年と何ら変わらぬ彼人は。
   もう少しで、鍵を開けてしまう。
   無理矢理閉じ込めた俺の本心を。
 
   ―解き放して、しまう。

   「…それ以上は、云うな…」

   まるで地を這うような低い声で。
   天戒はやっとの思いで、それだけの言葉を綴った。
   龍斗はと云えば、掴まれた肩に視線を落とし、
   …そっと、力の篭もった手に己の手を重ねた。

   「―――っ、」

   ビクリ、と。
   天戒の体が震えて。

   「俺なんかじゃ、役者不足だとは思いますけど」

   見つめる瞳が。
   天戒の歪んだ表情を覗き込む龍斗の瞳が、
   夜空を薄く照らす月を映して金色に輝いていた。

   「…でも、俺は。『本当の貴方』と話したい。
   貴方には一緒に笑ったり怒ったり…時にはケンカなんかも
   できるような…そういう人間が必要だと思うんです。」

   それは。それは俺だって。
   ずっと欲していた。そんな存在を。

   「貴方は周りの心配ばかりで自分を蔑ろにし過ぎてます。
   …もっと、自分を…自分の、心を。大切にしてください。」

   云いながら、龍斗は微笑んで。
   その表情に目を奪われた、一瞬の内に。
   空いていた方の龍斗の腕が、天戒の首に廻って。
   自分より、少し高い場所にあるそれを。
   グイ、と。
   自分の肩口まで引き寄せた。

   「…緋、勇…?」

   その行動に戸惑った天戒が、その名を呼べば。
   紅い髪に乗せられた手が、まるで子供をあやすような動きで上下した。
 


 


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